80年代の音楽はアポロ計画のようなものだった

2019年5月22日Realism~Anthology~リリースまであと一週間。
Realism Anthology
このアルバムは当時スティーヴィーワンダーや
スティングが使っていたことで有名な、
当時1億円もしたというシンセ機材、シンクラヴィアを使って
制作されています。
シンクラヴィア
まだハードディスクレコーダーのない時代に
いち早くハイクオリティーでハードディスクレコーディングできただけでなく、
シンセ音源部分から繰り出されるサンプリング音の太い事、かっこいいこと。
木目のいい家具のような高級感のある音でもいいましょうか?
シンセ界のフェラーリという煌きと風格。
その音のカッコよさが今回はリマスターで手に取るようにわかる。
復刻CDは配信とはリマスターが違います、
復刻CDのみ僕の監修によるもので、
ベースなどがグルーヴィーにぐっと出ている曲もあります。
シンクラヴィアは、
特にTHIS TIMEという曲でお聴きになれます。

ちなみに今、シンクラヴィアはアプリになっています。
シンクラヴィア アプリ

でも音は昔のシンクラヴィアとは似て非なるもので全然違う。
値段が天と地ほど違いますが、それと同様に
音もアプリではペラペラに薄い。人間は多少劣っても、
簡便を優先しているということがわかります。

Realismに参加しているミュージシャンにも注目下さい。
当時の東京のスタジオミュージシャンの技術は世界水準であったと言っても
過言じゃないでしょう。
さらりと弾くプレイがすぐに録音OKなフレーズになるマジックのような録音を経験しました。
あまりにミュージシャンのプレイが素敵で感動で泣きそうになることはよくありましたよ。

今回のアルバムはオリジナル盤とは違いミュージシャンの詳しいクレジットが書いてありますし、
使用されたスタジオも書いてあります。
歌、曲、歌詞、アレンジの他に、80年代にピークだったバブル時代に贅を尽くした音のクオリティー
ミュージシャンのプレイに是非酔いしれて下さい。

新曲や、Bass亀田誠治さんkey松本晃彦さん参加のバンド時代VIZIONの曲新録など
ミニアルバム分6曲のボーナストラックもあり。
できればよいヘッドフォンで聴いて下さいね。
realism 説明
(1988年Realism 発売時のパンフより)

今のレコーディングはそんな贅沢な機材も、大勢のミュージシャンも使えません。
80~90年代半ばまでのレコーディングはある意味
アメリカのアポロ計画のようなものだと思っています。

今のアメリカは有人月面着陸がお金がかかり過ぎてできません。
これから先もずっとできない可能性があるといいます。
それはアポロ時代の大規模なロケットノウハウの細かいところが継承できていないからだそうで、
(どんな技術も使い続けないと廃れるのだそう)
アポロ計画、戦艦大和、アナログのハイビジョン、
ある時代に迎えた技術や文化のピーク。
80年代の音とはそういうものでした。
大和画像解像度高いものB
(僕が作った戦艦大和のプラモデル、全長約30cm。矢印に米粒大の水兵が・・)

その音がパッケージされたRealism~Anthology~は当時の貴重な記録だとも言えます。
スマホも携帯ゲームもなかった時代に。音楽がその全ての娯楽を担っていました。
だからお金を掛けられたし、優秀な人材が多く集まっていたのです。

Realism~Anthology~を引っ提げてのライブが6月東京、大阪、名古屋、京都で
行なわれます。
曲順も含めてCD完全再現のライブ。それだったらCD聴けばいいんじゃないかって?
ヒューマンなパワーで生演奏してCD順に聴くということは特別な体験になると思います。
Realismの世界に浸っていただいて、
演劇の一幕二幕と進んでゆくようなイメージのライブになります。
去年も1st アルバムの完全再現ライブを行いましたが、アルバム演奏終わりで
大きな拍手が巻き起こりました。それもまた演劇的な反応だったと思います。

皆さんが人生のどこかで出会った崎谷の音楽、その音楽を通じて
皆さんの記憶を辿って80年代にタイムスリップしませんか?
きっと楽しいひとときになると思いますよ。

1988年Realismリリース時の崎谷初ツアーThis time tour
ライブ音源から「もう一度夜を止めて」リマスターして動画にしてみました。